目の病気

緑内障

緑内障は,視野(見える範囲)が欠けてくる病気で,その原因は視神経が障害されること,すなわち正常に機能する視神経線維が減少する病気です。
一度失われた視神経線維は,元に戻りません。病気の進行とともに,見える範囲が次第に狭くなり,光を失うケースもありえます。
視神経が障害される原因は,「高眼圧」,つまり眼圧が高くなることで視神経乳頭(=視神経線維が眼球から出て,太い1本の束となり脳へ向かう部分)が眼球内部で圧迫を受けることが原因であると考えられてきました。
この考え方は現在も正しく,眼圧の高い人は緑内障になりやすいことには疑いがありません。眼圧の正常範囲は10〜20mmHgですが,21mmHg以上であれば高眼圧ということになります。
緑内障の発症に関係するのは,しかし,高眼圧だけではありません。
眼圧が正常範囲にあっても視神経乳頭が高眼圧の場合と同様に,圧迫を受け陥凹してくることがあります。
それは視神経乳頭の構造が相対的に弱い(眼圧に対して感受性が高い)ためと考えられます。
つまり視神経乳頭の強さと眼圧のバランスが崩れて視神経障害が進む病気が,緑内障であると言うことです。
最近日本で行われた大規模な疫学調査で,「緑内障患者は40歳以上の5.8%(17人に1人)で,しかもその過半数は眼圧が正常範囲にある」ことがわかりました。
眼圧は正常範囲であるものの緑内障の症状を示す,このような状態は「正常眼圧緑内障」と呼ばれています。

緑内障の検査

■眼底検査

視神経乳頭の陥凹を,直接確認します。
緑内障の進行で視神経障害が進むと陥凹が拡大してきます。
この形状変化は視野の異常より早い段階であらわれるので,緑内障の早期発見,とくに眼圧に変化が現われない正常眼圧緑内障の診断にとって重要です。



■眼圧測定

眼圧が高いことは,緑内障の発症あるいは進行の危険因子ですから眼圧測定は重要です。
ただし正常眼圧でも緑内障を生じるわけで,眼圧だけで診断を行うことはできません。
眼圧は季節や時間帯によっても変動があります。
とはいえ,眼圧の推移を観察してゆくことは,緑内障眼の管理に重要な情報を与えてくれます。
緑内障の場合に基本的な検査であることは間違いありません。

■視野検査

眼底検査で緑内障性変化が疑われた場合には,視野検査を行って診断を確定させることが重要です。
現在の標準的な視野検査は静的視野測定(ハンフリー静的視野計など)です。
緑内障による視野障害の進行には一定のパターンがあり,それに照らし合わせて進行段階を把握します。

《視野変化の進行パターン》

@は異常が現われていない段階で,黒い部分は正常者にもみられる盲点。
病気の進行と共に,視野の中心部を迂回する形(A→D)で,見えない範囲が広がってゆく。

この例は左目のパターン。


■隅角検査

隅角は目の中を循環している透明な液体(房水)の排出をつかさどる部分で,この部を観察するために,検査用のコンタクトレンズを目の表面にのせて検査します。
目薬により麻酔を行ってから検査します。

緑内障の治療

緑内障の治療は,病気の進行をくい止めるために眼圧を下げるように努めるのが原則です。
眼圧を下げる方法には,薬物治療,レーザー治療,そして手術があります。
レーザー治療や手術を受けた場合に,いったん眼圧が下がっても,その効果が維持されるとは限らず,再手術が必要になることもあります。

■薬物治療

緑内障と診断された場合,まず目薬による治療が始まります。
眼圧を下げるための目薬には多くの種類がありますが,目の中での房水の産生を抑えたり,流出を良くしたりする薬です。
最初は1種類の目薬から始まりますが,目標とする眼圧にたいして効果が不十分な場合には,数種類の目薬を併用したり,またその組み合わせを変えたりします。
点眼薬だけで効果がまだ不十分な場合には,さらに内服薬を併用することもあります。

■レーザー治療

レーザー光線を虹彩にあてて房水の通路となる孔を開けたり,線維柱帯という部分にあてて房水の流出を促進します。

■手 術

手術には,房水を流れやすくするために,その通路をつくる手術や,房水の産生を抑える方法などがあります。
緑内障の手術の目的もやはり,病状の進行を防止するために眼圧を下げることであって,眼圧を下げるという点においては薬物治療の場合よりも直接的な効果が期待できます。
しかし,薬物治療の場もそうですが,眼圧が下がったからといって一度失われた視野が回復してくるわけではありません。
さらに手術により十分な眼圧下降が得られても,視野狭窄の進行を完全に抑えられない場合もあります。
手術を受ける場合はこういった点について十分ご理解されることが大切です。